龍安寺の庭
— 石組みと音楽 —
最も人に知られた枯山水庭園だと思うが、金地院庭園に代表されるような、鶴亀蓬莱といった意味を感じさせない、ある意味、異質とも言える庭だ。一説には「虎の子渡し」と呼ばれる説話を表現しているとも言われるが、仮にそうであったとしても、そのことを理解しないと見る事ができないという庭ではないように思う。
白砂と石組みだけ、石の周囲に苔が少しあるだけの庭であり、枯山水庭園のなかで特別に石庭とも呼ばれる。このような庭の作例は少ないという。方丈の南に広がって「庭」と呼ばれる場所は、本来儀式用として白砂の他には何もない空間が基本で、そこに石組みや植栽を行なう場合は南側に寄せて作られて、「庭」と区別されて「南庭」と呼ばれるようだが、この庭の場合、その境は判然としていない。ただし儀式用空間としての機能も残されて方丈側には石組みはない。
東入り口側から見た全景 |
さほど大きくはない、他の庭に比べれば小さいとさえ言える石によって、5つの石組みのグループが作られている。油土塀などによってくっきりと長方形に区切られた敷地、敷き詰められた白砂の広がりの中に、ゆったりと石組みのグループが散在する。小さい石のサイズ、低く構えた油土塀の上に外の植栽が見える視線を完全に遮ることのない構成、石組みもそれぞれ2〜3個程度という少ない石数で、決して広大ではない庭にも関わらず、広がりを感じることができる。
金地院庭園のように全体を力強く構成するというのではなく、5群の石組みそれぞれが独立して見る事ができるように作られているように見える。
5群の石組みはそれぞれ組み方が異なる。東(入り口側)から、①一番大きな石による「三尊石組み(三つの石の伝統的組み方)+左右に離れて小さな2つの平石」の5石、②一番奥まって油土塀近くの2石による「小さい立石と横石」、③少し右斜め前に3石による「横三尊石組み(最も大きな石が通常とは異なって中央ではなく左端にある)」、④少し斜め後ろに2石による「横石と斜めに傾けた立石」、⑤東端石組みに次ぐ規模の「大きな石+左右に小さい平石」という3石の、5グループの石組みが、方丈に対してほぼ横に並ぶ庭になっている。
5群の石組みはそれぞれ組み方が異なる。東(入り口側)から、①一番大きな石による「三尊石組み(三つの石の伝統的組み方)+左右に離れて小さな2つの平石」の5石、②一番奥まって油土塀近くの2石による「小さい立石と横石」、③少し右斜め前に3石による「横三尊石組み(最も大きな石が通常とは異なって中央ではなく左端にある)」、④少し斜め後ろに2石による「横石と斜めに傾けた立石」、⑤東端石組みに次ぐ規模の「大きな石+左右に小さい平石」という3石の、5グループの石組みが、方丈に対してほぼ横に並ぶ庭になっている。
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5つの石組みはそれぞれ構成と性格が異なり、そういう違いを作る事を楽しんでいる、違いを見る事を楽しむ庭のように見える。ジャンルは異なるが、思い起こすのはバッハのイタリア組曲やフランス組曲である。独立して聴く事ができる舞曲が集められ組み合わせられて、ひとつの組曲が構成されている、そういう音楽が想起される。絵で言えば、扇面散らしの屏風絵。
比べて言えば、金地院庭園はソナタ形式のようにがっしりと構成された音楽に似て、鶴・亀・蓬莱という3要素による構成は、そのままソナタ形式の構成のようでもある(音楽に特別詳しい訳ではないのだが)。
龍安寺の石組みのなかで、あえて好みを言えば3と4の石組みが好きだ。特に好きなのは3(上の写真左側)のちょっと古風な感じのする石組みなのだが、可愛らしいと言ったら言い過ぎだろうか。しかし、そういう見方も許してくれる庭のように思える。
古川流雄(美術家)
古川流雄(美術家)
参考文献
1、「日本の10大庭園 — 何を見ればいいのか — 」 重森千青著
祥伝社 2013年
2、「京の庭師と歩く 京の名庭」 小埜 雅章著
株式会社平凡社 2003年
3、「図解 庭師が読み解く作庭記」 小埜 雅章著
株式会社学芸出版社 2013年
4、「京都名庭園」 水野克比古著
光村推古書院 2002年
5、「名園を歩く 第5巻 江戸時代初期Ⅱ」 写真:大橋治三 解説:斎藤忠一
毎日新聞社 1989年
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